画家フラ・アンジェリコ。今回は、生い立ちや絵の特徴をまとめてみました。それではいってみましょう。
フラ・アンジェリコの生い立ちとは?
美術館を巡っていると、まるで祈りそのものが絵になったような作品に出会うことがあります。その絵の前に立つと、思わず足を止め、静かに見つめたくなるような——そんな絵を描いたのが、15世紀イタリアの修道士であり画家、フラ・アンジェリコです。
本名はグイド・ディ・ピエトロ。1395年頃、イタリアのトスカーナ地方にあるヴィッキオという村に生まれました。若い頃から芸術の才能に恵まれた彼は、やがてドミニコ会の修道士となり、名前を「フラ・ジョヴァンニ」(兄弟ヨハネ)と改めます。
彼が「アンジェリコ(天使のような)」と呼ばれるようになったのは、信仰心に満ちたその絵の数々と、誠実で温和な人柄からでした。
修道士としての人生と画家としての活動は、切り離せないものでした。彼にとって絵を描くという行為は、ただの芸術表現ではなく、神への奉仕、祈りそのものであったのだと思います。
だからこそ、彼の作品には派手な装飾や劇的な演出よりも、静けさと精神性が溢れているのです。
フラ・アンジェリコの絵とは?
フラ・アンジェリコの代表作の一つに、フィレンツェのサン・マルコ修道院のフレスコ画群があります。彼はこの修道院に暮らしながら、壁という壁にキリストの生涯や聖母マリアの物語を描きました。
特に「受胎告知」の場面はあまりにも有名で、天使ガブリエルが聖母マリアに神の子を宿したことを告げるその瞬間が、静かな美しさと神聖さで描かれています。
面白いのは、この「受胎告知」の構図がとても簡素であること。大理石のような柱が並ぶ空間に、静かに立つ天使とマリア。ただそれだけ。でも、その無言のやり取りの中に、圧倒的な神聖さが流れています。
また、同じサン・マルコ修道院の中にある「十字架のキリスト」や「嘲笑されるキリスト」といった作品も、悲しみや痛みを過剰に表現することなく、むしろ静けさの中にある深い愛と信仰を感じさせます。
フラ・アンジェリコは絵を通して、言葉では届かない部分に働きかけようとしていたのかもしれません。
フラ・アンジェリコの絵の特徴とは?
フラ・アンジェリコの絵の一番の特徴は、その「静けさ」と「祈りの空気」だと私は感じます。15世紀という時代は、ルネサンスの始まりでもあり、リアリズムや人間性の探求がどんどん進んでいた時代です。
そんな中で、彼の作品はある意味で時代に逆らうような純粋さを持っています。豪華さや動的な表現よりも、信仰と精神の深まりを重んじた作風だったからです。
色使いも特徴的で、柔らかな金や青が多用され、目に優しく、どこか天上的な雰囲気を漂わせています。また、人物の顔立ちには一貫して温和な表情があり、怒りや激しさとは無縁。
彼の絵に登場する天使たちは、いわゆる写実的な描写よりも、精神的な存在としての理想像のように描かれています。まるで「この世」と「あの世」の間にある境界線を、優しく指でなぞるような描写です。
そしてもうひとつ、光の扱いにも注目すべきです。フラ・アンジェリコの絵の光は、現実の光ではなく、精神的な「内なる光」を象徴しているように見えます。
たとえば、マリアの顔を照らすやわらかな光は、単なる日の光ではなく、神の存在そのものを表しているように感じます。こうした象徴性があるからこそ、彼の絵は見る者の心を静かに揺さぶるのでしょう。
最後に
今の私たちは、スマホで簡単に画像を検索できる時代に生きていますが、もし機会があるなら、ぜひフィレンツェのサン・マルコ修道院を訪れてみてください。フラ・アンジェリコの絵は、壁に直接描かれたまま、静かに、変わらずそこにあります。
その空間に身を置くだけで、日常の喧騒がふっと遠のき、心の奥にある「何か」が静かに動き出すような気がするのです。
フラ・アンジェリコの絵は、見る人にとっての「祈りの場」。美術の知識がなくても、信仰がなくても、きっと心のどこかに触れてくるはずです。私はそう信じています。
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