北欧の森に潜む物語画家テオドール・キッテルセン:生い立ちから絵の特徴まで優しく解説

き行

 
 
北欧の薄暗い森に足を踏み入れると、ふと背後からトロールの息遣いを感じるような気がすることがあります。そんな幻想を絵に描き、今もノルウェーの森に住む人々の心に残している画家が、テオドール・キッテルセンです。

車椅子生活の私が北欧の深い森に行くことは簡単ではありませんが、キッテルセンの絵を見ていると、松林の冷たい空気や苔むした岩に座るトロールの気配が、本当にすぐそばで息づいているように感じます。

今日は「テオドール・キッテルセン」という名前は聞いたことがあるけれど詳しくは知らない、そんな人のために、彼の生い立ち、絵、そして絵の特徴を優しく噛み砕いてお話しします。

一人でも多くの方が、キッテルセンの静かで不思議な世界に触れ、癒される時間を持ってもらえたら嬉しいです。

 

 

テオドール・キッテルセンの生い立ちとは?

 

テオドール・キッテルセン(Theodor Kittelsen)は1857年、ノルウェーのクラーゲローで生まれました。幼いころに父親を亡くし、家計は決して楽ではありませんでした。

少年時代から絵を描くことが大好きで、学校のノートの端っこにも鉛筆で小さなトロールや森の精霊のような絵を描き込んでいたそうです。


 
 
やがて彼の才能は見いだされ、地元の支援で美術学校に通う機会を得て、ドイツやノルウェー各地で学びながら絵の腕を磨いていきました。

絵を描くことはキッテルセンにとって生きる力そのものであり、経済的に苦しい中でも彼は自分の描きたい「北欧の自然と民話の世界」を絵に残し続けました。

私が彼の生い立ちで特に心打たれるのは、「大きな名声やお金よりも、自分が信じる北欧の自然の世界観を大事にした」という彼の姿勢です。障害がある私にとって、キッテルセンのように自分が信じる世界を描き続ける生き方は、小さな勇気をくれるものです。

 

テオドール・キッテルセンの絵とは?

 

テオドール・キッテルセンの絵は、一言でいうと「北欧の民話と自然が溶け合った、静かで不思議な世界」です。彼の代表作として有名なのは、巨大なトロールが霧の中にぼんやりと立っている「トロールの山の王」や、湖に潜む怪物を描いた「ネッケン」などがあります。

彼の描く森は、昼間でもどこか薄暗く、木々の隙間から差し込む光がとても幻想的です。その中に突然大きな目をしたトロールがひっそりと立っていたり、湖面に怪物の背中が浮かんでいたりする。その不思議さが、私たちの心の奥に眠っている子供の頃の想像力を呼び覚ましてくれます。

キッテルセンは子ども向けの民話の挿絵も多く描いており、その繊細なタッチと温かみのある表現は、挿絵としてだけでなく一枚の絵画として見ても大きな魅力があります。

 

テオドール・キッテルセンの絵の特徴とは?

 

キッテルセンの絵の特徴は、緻密な線画で描かれた自然の描写と、幻想的で少し怖い存在の共存です。彼のトロールは、ただ恐ろしいだけの怪物ではなく、どこか哀愁が漂い、人間に似た孤独を抱えているようにも見えます。

また、北欧の湿気を含んだ空気感、苔むした岩、霧に覆われた湖、針葉樹林の奥深さが繊細なタッチで表現されており、絵を眺めているとまるで自分が北欧の森の中で深呼吸しているような気持ちになります。

私が特に好きな特徴は、彼の絵が「見る人に想像する余地を残している」というところです。絵の中でぼんやりと立つトロールの視線の先に何があるのか、湖の底に何が沈んでいるのか、細かく描かれすぎていないからこそ自分なりの物語を付け加えたくなる。

外出が制限される生活の中でも、キッテルセンの絵を眺めるだけで、遠く北欧の森へ小さな旅をしたような気持ちにさせてくれます。

 

最後に

 

テオドール・キッテルセンの絵は、北欧の厳しい自然の美しさと、その中に潜む物語を思い出させてくれます。絵の中で生きるトロールたちは、私たちが忘れかけていた自然への畏怖や、見えないものへの想像力を呼び覚ましてくれるのです。

私は車椅子で生活する中で、思うように外に出られない日が続くことがあります。そんなときにキッテルセンの絵を眺めると、森の冷たい風を感じたり、湖面の冷たい水音が聞こえたりするような、そんな不思議な時間をもらえます。

もし、日々の生活に疲れて心が乾いてしまったと感じることがあったら、ぜひ一度、テオドール・キッテルセンの絵を調べてみてください。そこには静かだけれど深く優しい世界が広がっていて、あなたの心をそっと温めてくれるはずです。

 
 

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