小さなアトリエの窓から見える北欧の曇り空を見上げながら、私はふとニルス・キュレーゲルの絵を思い出していました。車椅子で生活する私にとって、旅に出ることは簡単ではないけれど、絵を眺めることで遠い北欧の森や海に触れられる気がしています。
ニルス・キュレーゲルの描く世界は、一見すると静かで、どこか寂しさを含んでいます。でも、その寂しさの奥には人間が生きる上で切り離せない温かさと、言葉にできない祈りのような気配があります。
私がニルス・キュレーゲルを知ったのは、SNSで偶然流れてきた彼の絵でした。無名時代の作品だったらしく、雪の降る林の中に小さな家がひとつだけ描かれたシンプルな絵でした。
そのときの「音のない静けさ」と「寂しさが柔らかく抱きしめてくれるような温度感」が忘れられず、いつか記事にしておきたいと思っていました。今日はその思いを実現させるために、このブログで彼の生い立ちと絵の魅力を伝えてみたいと思います。
ニルス・キュレーゲルの生い立ちとは?
ニルス・キュレーゲルは、1978年にデンマークのコペンハーゲンで生まれました。家庭は決して裕福ではなく、父親は港湾労働者、母親は近くのカフェで働いていたそうです。
幼少期から自然に囲まれて育ち、冬の寒さと雪景色が彼の心に深く刻まれました。外で遊ぶことが好きだった一方で、ひとりで絵を描く時間も大切にしていたようで、学校のノートの端には小さなスケッチがたくさん残されています。
10代の頃に母親を病気で亡くした経験は、彼の絵に孤独感を与えました。しかし、その孤独は闇ではなく、心の奥でかすかに灯る明かりのような形で作品に表れています。美術学校には進まず、
家具職人の弟子として働きながら絵を描き続け、20代の終わりに初めて地元のギャラリーで個展を開きました。
その頃の彼の絵は、北欧特有の灰色の空と裸の木々、雪に覆われた丘の中に小さな光を灯す家を描いた作品が多く、地元の新聞で「冬の孤独を愛する画家」と呼ばれたこともあります。
ニルス・キュレーゲルの絵とは?
ニルス・キュレーゲルの絵は、一目で「北欧らしさ」を感じる寒色と光の使い方が特徴です。白や灰色、淡い青のグラデーションが重なり合い、森の奥深くまで続く静寂を表しています。
その中でほんのわずかに描かれる暖かい黄色の灯りや、空の淡いピンク色が絵全体に命を与えているのです。
彼の描く絵の多くには人間が登場しません。しかし、不思議と寂しさはなく、むしろその空白が自分自身の心を投影する鏡のように感じられます。小さな小屋の煙突から立ち上る煙や、凍った湖の上に佇む赤いボートが、そこに「確かに人がいる」という存在感を伝えてくれます。
私自身、車椅子で動けない時間が長い中で、彼の絵を見ると「世界のどこかに自分の居場所がある」という穏やかな安心を与えられるのです。
彼の絵の中で特に印象的だったのが、「雪の降る道」という作品です。白い世界の中で一本の道だけが黒く伸びており、その先に小さな赤い家が描かれています。その赤は全体の色調からすると小さな面積ですが、視線を引き寄せ、歩いて行きたくなるような優しさを感じました。
絵の中にある「孤独の中の小さな希望」こそが、ニルス・キュレーゲルの絵の大きな魅力なのかもしれません。
ニルス・キュレーゲルの絵の特徴とは?
ニルス・キュレーゲルの絵の特徴を言葉にするなら、「静寂」「孤独」「祈り」「柔らかい光」。モダンなインテリアにも合うシンプルな構図ながら、絵の中に漂う感情の揺らぎが心を捉えます。
彼の絵は油絵でありながら水彩のような透明感を持っており、雪の粒子が空気中で光を散らす感覚まで感じられることが不思議です。
また、雪景色の絵が多いのですが、その雪は決して冷たいだけではなく、むしろ「心を包み込むような温度感」を持っています。雪景色の中に差し込むわずかな光の表現は、彼が孤独の中で見つけてきた希望そのものです。
実際に絵を買うことはできなくても、写真集や展示会で見たときに、その絵が放つ静かなエネルギーを感じることができます。インターネットの小さな画像越しでも、その絵の奥にある北欧の冷たく美しい空気が伝わってきます。
最後に
私は絵を観るたびに「世界にはこんな風景があったのか」と思い知らされます。そして、ニルス・キュレーゲルの絵はその感覚を強く呼び起こしてくれます。
北欧の冬のように厳しく、しかしその中に必ず差し込む柔らかな光のように、彼の絵には私たちが生きる中で抱えている孤独や不安をそっと包み込む力があります。
もし今、あなたが部屋の壁に何を飾ろうか迷っているのなら、ニルス・キュレーゲルの絵を選んでみてください。寒色の絵だから部屋が冷たくなるのではなく、静かな安心感が生まれ、自分と向き合える時間が増えるかもしれません。
私自身、毎日の中で疲れを感じたとき、彼の絵を眺めながら深呼吸する時間を大切にしています。
彼の絵を通して、自分の孤独を肯定しながら、その奥にある小さな希望を見つけられますように。これが私がニルス・キュレーゲルの絵に惹かれる理由であり、この記事を書いた理由でもあります。
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