私は車椅子に座りながら、ある日の午後に一枚の絵に出会った。その絵を描いたのが中国・広東省出身の画家、陳貴平だった。
東洋のしとやかな美人と、ヴァイオリンやピアノといった洋の楽器が一緒に佇むその画面には、私自身の身体が動かなくても心が自由に羽ばたくような感覚が広がった。ここから私は、彼の生い立ちや絵の世界を少しずつ旅してみようと思う。
陳貴平の生い立ちとは?

陳貴平は1962年、中国・広東省に生まれた。幼いころから絵筆を手にしていたという記録は少ないが、彼が後に中国広州国立美術学院中国画科を卒業したという経歴から、学生時代には相当な努力を積んだことがうかがえる。
さらに、広東省珠海市美術展で大賞を受賞した作品『童心』が、彼の転機となった。 私も身体の制約を抱えながら日々を過ごしているが、彼の歩みには“動けなくても描ける”という希望の光のようなものを感じた。
陳貴平の絵とは?
彼の描く絵の主なモチーフには「中国美人」と「楽器」がある。中国画の伝統を根底に据えつつ、西洋の画技法を取り込み、水彩、版画、シルクスクリーンなど多様な技法で表現してきた。
私が見たその一枚では、ピアノの鍵盤が淡く光り、その前に佇むゆったりとした佇まいの女性の横顔が、まるで音楽の余韻を纏っているかのようだった。車椅子越しに、その光と影の重なりに引き込まれた。
陳貴平の絵の特徴とは?
まず、東洋的な線の美しさが際立っている。筆線は滑らかで、余白を活かす構図が静謐(せいひつ)な時間を醸している。一方で、西洋絵画に見られる陰影(シャドウ)や光の捉え方、さらに楽器から発せられる「音の気配」を視覚化しようという意図が感じられる。
版画作品では、シルクスクリーンの鮮やかな色彩と、柔らかな表情の女性像がミックスされていて、私はまるで音符のように色が舞っていると感じた。また、背景がシンプルなぶん、主題である女性と楽器が際立つので、画面に入った瞬間に“語りかけられる”ような印象を受ける。
移動が難しい私でも、その絵の前にじっと座り込むことで、まるで音楽室にいるような時間を共有できた。
最後に
車椅子というモビリティに限界を抱えながら、私が陳貴平の絵に出会ったとき、身体が動かなくても心は自由に揺れていいのだということを改めて思った。東洋の静けさと西洋の動きが一枚の絵に溶け込んでいるその世界は、私にとって“可能性”の象徴となった。
もしあなたが美術館で彼の作品を目の当たりにする機会があれば、ぜひ数分でもいいから、その前に腰を落ち着けてみてほしい。車椅子でも、立ってても関係なく、絵という時間があなたを包んでくれるだろう。
描かれた女性の視線や、楽器の残響を感じながら、ふと「私も描ける、私も語れる」という内側の声に気づけるかもしれない。以上、車椅子ユーザーまっつんが、心のままに綴りました。
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