花々に宿る静謐な魂――知られざる画家マリー・エグナーの生涯と絵の魅力

え行

 
 
「こんなに心が落ち着く絵があったんだ――」

初めてマリー・エグナーの作品に出会ったとき、そんな言葉が自然に漏れた。私が美術館でもネットでもなく、たまたま古本屋の絵画雑誌の一枚の挿絵で出会ったのが、彼女の描いた花の絵だった。

派手さはない。でも目を奪われる。何度も何度も見返してしまう。色も形もやさしくて、なのに芯の強さを感じさせる――そんな絵だった。

正直、私はマリー・エグナーという名前をそれまで聞いたことがなかった。でも、その絵に引き寄せられ、手帳に名前を書きとめた。そして、家に帰ってから彼女のことを少しずつ調べていくうちに、ますます惹かれていった。

今日はそんな彼女のことを、私なりの言葉でまとめてみたいと思う。プロではないけれど、だからこそ感じたことを正直に綴りたい。

 

マリー・エグナーの生い立ちとは?

 

マリー・エグナーは1855年にオーストリアのラーベンシュタインという小さな町で生まれた。女性画家がまだ珍しかった時代に生まれ、ウィーンを拠点に活躍したエグナーは、苦労しながらも絵筆を握り続けた人だった。

若い頃から自然や花に惹かれ、絵を描くことが好きだった彼女は、しばらくの間は独学で絵を学んだそうだ。のちに正式にウィーンで美術教育を受け、特に花の静物画や風景画に力を入れた。

女性であることが理由で、美術学校の本流からは外れていたかもしれないが、彼女はあきらめなかった。
 
 
実際、1880年代にはドイツのミュンヘンでも学び、さらにイタリアやオランダなど、ヨーロッパ各地で研鑽を積んでいる。彼女は「女性画家」という枠を超え、自分の目と手で世界の美しさを掴み取ろうとしたのだろう。

ウィーンでは絵画学校も開いており、多くの女性たちに絵を教えたことでも知られている。まさに、静かに社会を動かした存在だった。

 

マリー・エグナーの絵とは?

 

マリー・エグナーの絵には、派手な演出はほとんどない。でも、その中にある“息づかい”のようなものが感じられる。とくに有名なのは花の絵だが、私は彼女の風景画にも心を奪われた。

例えば、《フローラル・アレンジメント》といった花の静物画。描かれた花は決して「完璧」ではない。枯れかけの花びらがあったり、少し傾いていたり。でもその不完全さが、逆に本物の命を感じさせる。


 
 
また、彼女の風景画では、空気の透明感や時間の流れがじわっと伝わってくる。湿った朝の空気や、夕暮れ時の光のにじみが、あくまでさりげなく描かれている。そのリアルさは、彼女が自然の中で何時間もじっと佇んで、耳を澄ませていたのではないかと思わせる。

色づかいもとても印象的だ。派手さを避け、どこかグレイッシュなトーンでまとめながら、ほんのりと光が射す部分には優しい色を差している。まるで「私だけが見つけた小さな光」をキャンバスにそっと置いたような、そんな感じ。

 

マリー・エグナーの絵の特徴とは?

 

マリー・エグナーの絵には、写実と詩情が絶妙に共存している。たとえば、同時代の印象派のように大胆な筆致で空気を切り取るというよりは、彼女は一つ一つの花びらや葉に細やかなまなざしを注いでいる。

でもその細かさが“硬さ”にならず、むしろ画面全体としてはふわりとしたやわらかさに包まれているのが不思議だ。
 
 
また、彼女の絵は「静けさ」を大事にしているように思える。ガチャガチャした構成はなく、構図も穏やかで、見る人に「ちょっとここで一休みしていきませんか?」と語りかけてくるようなやさしさがある。

面白いのは、背景にもほとんど情報を詰めこまない点。ときには白い壁、ときにはただの薄い影。それが却って、主題である花や風景を引き立たせてくれている。控えめで、でも芯が通っている。そんなところに、彼女自身の人柄がにじみ出ているようにも感じる。

 

最後に

 

マリー・エグナーの名前は、まだ日本ではそれほど知られていないかもしれない。でも、彼女の絵にふれると、誰もが静かに深呼吸したくなるはずだ。日常の喧騒に疲れた心に、やわらかな光を差し込んでくれる、そんな作品ばかりだ。
 
 
そして私は思う。エグナーの絵は、ただ美しいだけじゃない。生きるということ、観るということ、自分の目で世界を捉えるということの尊さを、そっと教えてくれているような気がする。

だからこそ、もっと多くの人に知ってほしい。もしどこかでマリー・エグナーの作品に出会うことがあったら、どうか一瞬でもいいから足を止めて、その絵の前で立ち止まってほしい。そして、自分の中にある静けさを、彼女の絵と一緒に見つけてもらえたらうれしい。

 
 

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