カラヴァッジョ(Caravaggio)。名前を聞いたことがある方も、これから知る方もいるかもしれません。私は美術館へ行くのが体調的に難しい日もあるのですが、だからこそ本で絵を眺めている時間がかけがえのない楽しみになっています。
そんな中で出会ったのがカラヴァッジョの作品でした。暗闇から浮かび上がるように光を浴びる人物の表情。こんな絵がこの世にあるんだと、思わず息を呑んでしまったんです。
今日はそんなカラヴァッジョの「生い立ち」「絵」「絵の特徴」について、これから絵をもっと知りたい方にもわかるようにやさしく書いてみたいと思います。
カラヴァッジョの生い立ちとは?
カラヴァッジョ、本名はミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ。1571年にイタリアのミラノ近郊で生まれました。「カラヴァッジョ」という名前は彼が育った村の名前からきているそうです。
幼少期の頃に父親をペストで失うなど、波乱の幕開けだった彼の人生ですが、その後も生き方はまさに激動そのもの。絵の勉強をするために若くしてミラノに出て修行をし、20歳ごろにはローマへ移り住みました。
ローマでの生活は苦しく、食べるものにも困るような日々の中で、少しずつ絵の注文を受けるようになります。しかし、彼の性格は荒々しく、喧嘩沙汰を起こすことも多かったようで、絵画史に残る名声を得る一方で、彼自身は暴力事件に巻き込まれ逃亡生活を送ることになります。
それでも彼が描く絵はローマの中でも注目されるようになり、多くの教会やパトロンから注文が舞い込むようになります。ですが不運なことに、ある喧嘩がもとで人を殺してしまい、ローマを追われることに…。
その後、逃亡先で病に倒れ、1609年にわずか38歳でその短くも濃い人生を終えました。
カラヴァッジョの絵とは?
カラヴァッジョの絵を一言で言うならば「光と闇のドラマ」。
例えば『聖マタイの召命』という絵では、暗い部屋の中に差し込む光が、そこにいる人々の表情や手の動きをくっきりと浮かび上がらせています。それは聖書の中の一瞬の出来事を、今目の前で起きているかのように感じさせてくれる力があります。
また『ゴリアテの首を持つダビデ』では、自分が殺した巨人ゴリアテの首を持つダビデの姿が描かれているのですが、そのゴリアテの顔はカラヴァッジョ自身の顔だとも言われています。
自分自身を作品に重ねることで、ただの宗教画ではなく、人間の苦悩や孤独、罪深さを絵に刻み込んだのだと感じました。
彼の絵には、美しい色彩で埋め尽くすような装飾的な部分はほとんどなく、背景は暗く沈み込んでいて、その中で人物が鮮烈に浮かび上がるように描かれています。このシンプルさと力強さが、当時の他の画家たちとは全く違う存在感を放っていたのです。
カラヴァッジョの絵の特徴とは?
カラヴァッジョの絵の特徴は「明暗対比(キアロスクーロ)」という技法がよく語られますが、これは本当に見ればすぐにわかります。光が当たっている部分と影の部分の差が強く、それによって人物の表情、感情、緊張感が絵全体に生まれているんです。
また、人物のポーズや顔の表情がものすごくリアルで、生きている人間をそのまま目の前に連れてきたかのような臨場感があります。それもそのはず、カラヴァッジョは実際に街の中の人々をモデルにして描いたと言われています。
だから彼の聖人たちは、神々しさだけでなく、どこか人間らしい弱さや哀しさをまとっているのです。
さらに、カラヴァッジョの絵には物語性があります。聖書の中の一瞬を切り取っているのに、その前後の出来事まで想像できてしまうような力があるんです。
暗い背景から浮かび上がる光を浴びた人物の目線や指先の動きは、私たち鑑賞者に「このあと何が起きるんだろう」と想像させてくれます。
最後に
私は車椅子で過ごす時間が長いので、美術館や遠出ができない分、カラヴァッジョの画集を眺める時間が心の支えになっています。
彼の人生は短くて荒々しかったけれど、その生き方がそのまま絵の力強さにつながっているように感じます。
私がカラヴァッジョの絵を好きな理由は「美しさ」だけではなく、彼の絵から伝わってくる「生きていることの激しさ」や「光と闇が隣り合わせにあるこの世界のリアルさ」に触れられるからです。
もしこの記事を読んでくださったあなたが、カラヴァッジョの絵を一枚でも見てみたいなと思ってくれたら嬉しいです。そしてその時、背景の暗闇から浮かび上がる光の中に生きる人々の姿に、自分の人生とも重なる何かを感じてくれたらもっと嬉しいです。
今回も最後まで読んでくださりありがとうございました。また絵の世界で心が動いた瞬間があったら、ここで一緒に分かち合えたら嬉しいです。
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