美術館を訪れた。スロープをゆっくり上り、白壁に掲げられた一枚の絵の前で、思わず立ち尽くした。その絵を描いたのが画家バーテルミー・デックだったと知った瞬間、過去も技法も一気に気になり始めた。
視線がそのキャンバスを離れず、僕の心も少し揺れた。僕は何度か同じ絵の前に戻った。光のあたり具合、壁の色、廊下の静けさ。そんな環境が絵の印象を変えていくのが分かった。僕にはその変化も楽しかった。
そこからこの「生い立ち」「絵」「絵の特徴」「最後に」という構成で、デックという画家に寄り添ってみようと思う。
バーテルミー・デックの生い立ちとは?

バーテルミー・デックは、幼少期から絵筆を手にしたわけではない。彼が育った環境は、決して絵画一色ではなかった。家庭には何かしら違和感があったという。どこから来たのか定かではないが、幼い頃から「異物を見る目」を持っていた。
美術館や書物ではなく、街角や廃墟、草むらに転がるガラス片にさえ、その目は向けられていた。成長するにつれ、その視線は内面へと深まっていった。身体に制約を抱える人間の心にも響く「見えない視界への憧れ」が、デックの心底にあった。
やがて彼は絵を描き始めるが、その出発点は華々しいものではなかった。展示会も少なく、賛辞よりも戸惑いの声が先に来た。だがその戸惑いこそが、後の輝きを支える伏線になった。
バーテルミー・デックの絵とは?
彼の描いた絵は、ぱっと見では何を描いているのか分からないことが多い。キャンバスには、霞のような色彩のベースのうえに、鋭く破れた線や、にじんだ影が交錯している。近づくと、線の一本一本に時間の痕跡が宿っているのが分かる。
遠ざかると、絵全体がひとつの風景、あるいはひとつの記憶のように見えてくる。僕はその絵の前で、目を細めて距離を取り、また近づいて細部を見るという行為を繰り返した。
車椅子のタイヤが軽く軋む静かな音のなか、絵が語りかけてくるような錯覚を覚えた。「この世界はあなただけのものではない」と。
バーテルミー・デックの絵の特徴とは?
デックの絵の特徴として、まず「空白の使い方」が挙げられる。画面の大部分に余白とも言える淡い色が広がり、その中に黒や藍、錆びた赤といったアクセントが点在する。
まるで呼吸をしているかのように、色彩が膨らんだり縮んだりする。次に「記憶の粒子」のようなテクスチャがある。絵具の厚みがあってもなくても、その表面には過去の気配が宿っている。
僕は手のひらで感じるようにその表情を眺めた。最後に「曖昧な輪郭」。人物も建物も明確には描かれていない。輪郭はにじみ、背景と溶け合い、観る者に「何か」を想像させる余地を残している。
車椅子ユーザーとして僕が感じる「視界の制限」や「風景との距離感」が、どこかこの絵に通じているように思った。
最後に
今日、こうしてデックの絵を通じて僕自身の世界も少し広がった気がする。身体が自由でないという自覚が、逆にこの絵を味わう感度を高めてくれた。バーテルミー・デックは、目に映らないものを描こうとしている。
僕はそれに気づいた時、心の奥の小さな灯が灯ったような気分になった。そしてその灯は、きっと誰にとっても明かりになり得る。誰かがこの絵を見て、自分の世界が少しだけ変わるなら、彼の表現は成功だと僕は信じる。
まっつんのブログを読んでくださる皆さんにも、この絵との出会いをぜひ体験してほしい。
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