夢と悪夢のはざまで描いた画家 ヨハン・ハインリヒ・フュースリーの生い立ちと絵の世界

ふ行

 
 
美術館で一枚の絵の前に立ったとき、思わず背筋が冷たくなるような感覚を覚えたことがあります。私は車椅子で移動することが多く、展示室では自然と立ち止まる時間が長くなります。

そんな私の視線を釘付けにしたのが、夢なのか現実なのかわからない、不穏で幻想的な人物画でした。その作者が、ヨハン・ハインリヒ・フュースリーです。名前を聞いてピンと来なくても、強烈な悪夢を描いたような作品を思い浮かべる方は多いかもしれません。

この記事では、私自身の目線で、フュースリーの生い立ちと絵、そしてその独特な特徴について、できるだけ噛み砕いてお話ししていきます。

 

 

ヨハン・ハインリヒ・フュースリーの生い立ちとは?

 

フュースリーは十八世紀後半に活躍した画家で、現在のスイスにあたる地域で生まれました。もともとは画家ではなく、若い頃は神学や文学に強い関心を持ち、聖職者の道を志していたそうです。

この背景は、後の作品を理解するうえでとても重要だと私は感じています。宗教的な物語や聖書の登場人物、善と悪、光と闇といった二項対立が、彼の思考の中心にあったからです。

その後、政治的な理由や周囲の勧めもあり、彼は母国を離れてヨーロッパ各地を転々とします。特にイギリス滞在中に文学や演劇、そして絵画に本格的にのめり込み、画家としての道を選びました。

専門教育を順調に積んできた画家というよりも、思想や読書、人生経験を抱え込んだまま絵筆を取った人物だった、という印象があります。だからこそ、彼の作品には整いすぎない危うさと、生身の人間らしい情念がにじみ出ているのだと思います。

 

ヨハン・ハインリヒ・フュースリーの絵とは?

 

フュースリーの絵を語るうえで欠かせないのは、夢や幻想、恐怖といったテーマです。彼は歴史画や神話画を多く描きましたが、その表現は写実的というよりも、内面世界を外に引きずり出したような構図が特徴的です。

人物の身体は誇張され、筋肉やポーズは演劇の舞台のように大げさです。私が初めて彼の代表作を見たとき、正直なところ、美しいという感想よりも、怖い、落ち着かないという気持ちが先に立ちました。

しかし時間をかけて見続けるうちに、その不安感こそが、彼の絵の狙いなのではないかと思うようになりました。夢の中では、理由もなく恐ろしく感じたり、現実ではありえない出来事が自然に起こったりします。フュースリーは、その感覚をそのままキャンバスに閉じ込めた画家なのです。

 

ヨハン・ハインリヒ・フュースリーの絵の特徴とは?

 

フュースリーの絵の最大の特徴は、理性よりも感情や無意識を前面に押し出している点です。これは後のロマン主義や象徴主義につながる考え方で、当時としてはかなり先鋭的でした。

背景は暗く、光は限定的に人物を照らします。その結果、画面全体に舞台照明のような緊張感が生まれます。また、登場人物の表情や姿勢が極端で、見る側に解釈を委ねる余白が大きいのも特徴です。

私はこの余白に、フュースリーの優しさを感じることがあります。答えを一つに決めつけず、見る人それぞれの経験や心境によって、感じ方が変わるように作られているからです。

車椅子での生活を送る私自身、日によって絵の印象がまったく違って見えることがあり、そのたびに新しい発見をもらっています。

 

最後に

 

フュースリーは、万人受けする画家ではないかもしれません。しかし、夢と現実の境界、心の奥底に潜む恐れや欲望といった、誰もが抱える感情に正面から向き合った画家であることは確かです。彼の絵は、きれいに整った答えをくれるものではなく、むしろ問いを投げかけてきます。

私にとってフュースリーの作品は、自分の内側と静かに向き合う時間を与えてくれる存在です。もし美術館で彼の絵に出会ったら、少し怖さを感じても、ぜひその場を離れずに眺めてみてください。きっと、その不安の奥に、不思議な引力と深い余韻を見つけられるはずです。
 
 
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