画家トマス・エイキンズ!生い立ちや絵の特徴を書いてみた。

え行

 
 
正直に言うと、「トマス・エイキンズ」って名前を初めて聞いたとき、私はてっきりどこかの大学教授か何かだと思ってしまった。油絵の世界に足を踏み入れるようになってから、彼の名前がアメリカのリアリズム絵画の大物だと知って、なんだか軽くショックを受けた記憶がある。

今の私は車椅子での生活だけれど、絵を見るという時間は、いつだって自由になれる瞬間だ。特にエイキンズの絵は、日常の空気感や人の感情がまるでそこに生きているように描かれていて、不思議と「こっち側」に引き寄せてくる。

今日は、そんな彼の人生と絵の魅力について、自分なりに書いてみたい。

 

トマス・エイキンズの生い立ちとは?

 

トマス・エイキンズ(Thomas Eakins)は、1844年にアメリカ・ペンシルベニア州フィラデルフィアで生まれた。彼の父親は書道の先生で、細かい筆遣いや形へのこだわりを幼い頃から見て育ったそうだ。

たぶん、あの緻密なデッサン力は、こういう環境が影響しているんだろうなと私は思う。

彼はフィラデルフィアのペンシルベニア美術アカデミーで学び、その後フランスへ渡ってパリのエコール・デ・ボザール(美術学校)でも勉強した。

ヨーロッパの古典的な技法を身につけながらも、アメリカに戻ったエイキンズは、ヨーロッパ風の理想美ではなく、現実の生々しさを追求する方向へ進んでいく。こういうところに、私は彼の頑固で一本筋が通った性格を感じる。

 

トマス・エイキンの絵とは?

 

エイキンズの絵には、妙な派手さはない。そのかわり、じわじわとくる。代表作といえば『グロス・クリニック(The Gross Clinic)』や『アガニュー・クリニック(The Agnew Clinic)』が有名だけれど、どちらも医学の現場をリアルに描いた、ちょっと衝撃的な作品だ。

『グロス・クリニック』なんて、手術中の出血シーンがドンと描かれていて、当時の保守的な人々には受け入れられず、万博の展示からも外されたほど。


 
 
でもエイキンズにとっては、医者の誇りや科学の進歩、そして「生きる」ということそのものを、きちんと記録したかったんじゃないかと私は思う。
 
 
それから、彼の描く人物画もすごく印象的だ。たとえば『水泳をする男たち(The Swimming Hole)』という作品では、全裸の若者たちが水辺でくつろぐ姿が描かれているけれど、それはいやらしさとは無縁で、むしろ身体の構造や躍動感が真摯に描かれている。

人間の体を「美」として、そして「現実」として見つめる姿勢に、私は心を動かされる。

 

トマス・エイキンの絵の特徴とは?

 

エイキンズの絵には、ある種の「重さ」がある。これは精神的な重さでもあるし、色の使い方や筆致にも表れている。光と影のコントラストは強く、特に肌の質感や布の重なりの描写には息を呑むようなリアリティがある。

彼はデッサンを非常に重視していて、解剖学的な知識を用いて人体を正確に捉えようとした。そのため、彼の描く人物はどこか骨太で、言い方は悪いかもしれないが、飾り気のない「むき出しの人間」としてそこにいる。
 
 
もうひとつ特徴的なのが「時間の止まり方」だ。エイキンズの作品を見ていると、その場面が永遠にそこにあるような、時間が凝縮されたような感覚になる。たとえば、ある青年が物思いにふけっているだけのポートレートでも、その沈黙が何かを物語っている気がして、目が離せなくなる。

リアリズムといっても、ただの写実ではなく、感情の奥行きまで表現されているのが彼のすごさだ。

 

最後に

 

私は車椅子に乗るようになってから、自分の視点が少し変わった気がしている。たとえば街の段差や手すり、他人の目線の高さ。エイキンズも、世の中の主流や流行には迎合せず、自分の目で見た「真実」を描き続けた。

彼の絵を見るたびに、私も自分なりの視点で、世界を記録し続けていいんだと思える。

トマス・エイキンズの絵は、決して「きれい」とか「かわいい」ではない。でも、その絵が描かれた背景や、絵の中の人たちの息遣いを感じられるとき、人間としての本質に触れたような気がする。

もしこの記事を読んで、「エイキンズの絵、見てみようかな」と思ってくれたなら、それだけで私は嬉しい。絵って、見る人それぞれの中で完成するものだと思うから。
 
 
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