画家ミハイル・ヴルーベリ。今回は、生い立ちや絵の特徴をまとめてみました。それではいってみましょう。
ミハイル・ヴルーベリの生い立ちとは?
ロシアの象徴主義を語るとき、避けて通れないのがミハイル・ヴルーベリという存在です。彼の名前を初めて知ったのは、美術書の片隅に載っていた「悪魔」シリーズの画像を見たときでした。不穏で、それでいて吸い寄せられるような色彩と表情――それがヴルーベリの絵の第一印象です。
彼は1856年、ロシア帝国のオムスクで生まれました。父親は軍人で、母親は早くに亡くなってしまったようです。子どもの頃から絵が得意だったそうですが、本格的に画家の道に進んだのは法律の勉強を終えてから。
最初はサンクトペテルブルクの法科大学に進学し、まったく別の人生を歩もうとしていたのですから不思議です。でも結局、絵の情熱には逆らえなかったのでしょう。彼はモスクワの美術学校に進み、そこから彼の独自の美術世界が開花していきます。
ミハイル・ヴルーベリの絵とは?
ヴルーベリの作品は、ひとことで言えば「幻想と不安の間にある美」。写実というよりは精神の深層を描くような絵が多く、いわゆる「現実をそのまま写す」という西洋的なスタイルとは一線を画しています。
特に有名なのが《座る悪魔》や《倒れた悪魔》といった一連の「悪魔」シリーズ。宗教的な意味での悪魔ではなく、孤独や喪失、あるいは自我の葛藤を象徴する存在として描かれています。筋骨隆々でありながら、どこか傷ついたような瞳が印象的で、見る人に静かな衝撃を与えます。
また、ロシアの童話やオペラに登場する登場人物を描いた作品もあります。《白鳥の王女》のように、神話と現実が混ざり合ったような絵には、まるで夢を覗き込んでいるような不思議な感覚があります。
彼の絵は決して「明るい」とは言えませんが、その奥にあるものはたしかに「美しい」と感じさせてくれます。
ミハイル・ヴルーベリの絵の特徴とは?
ヴルーベリの作品には、まず何より「線」が生きています。輪郭線が強く、時にガラスの破片をつなぎ合わせたようなシャープな印象を受けることがあります。これは彼が舞台美術や陶器の装飾にも携わっていたことと無関係ではないでしょう。
まるでモザイク画のように、色や形が断片的でありながら、全体では完璧に調和しているのです。
色づかいもまた独特です。青、紫、銀といった冷たい色が多用され、そこに金や深い赤が差し込まれることで、幻想的な雰囲気が生まれます。彼の絵を見ていると、まるで夢と現実の境目を歩いているような気分になります。
細部にこだわるあまり、画面全体が少し硬質に見えることもありますが、それが逆に彼の個性を強調しています。
そしてもうひとつ、彼の人物画には常に「孤独」が漂っています。たとえ華やかな衣装をまとっていても、瞳の奥には虚無のようなものが宿っている。その感情の深さに、見る者の心もまた静かに揺さぶられます。
最後に
ヴルーベリの人生は、絵とともに常に内面との戦いでもありました。精神を病み、晩年は幻聴に悩まされながらも、それでも筆を手放さなかった彼の姿は、芸術に取り憑かれた人間の姿そのものでしょう。
正直、彼の絵は「好き」と一言で言い切れるものではありません。でも、何かを心に引っかけて離さない力があります。綺麗でも可愛いでもない、美しいけれど苦しい――そんな複雑な感情を呼び起こしてくれるのです。
私にとって、ヴルーベリの絵は「心の奥を覗かれるような鏡」のような存在です。見るたびに、自分でも気づいていなかった感情や記憶に触れてしまう。それはちょっと怖くもあるけれど、だからこそ惹かれてしまうのでしょう。
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