初めてフォンタナの作品を写真で見たとき、正直な感想は「え、キャンバスが切れているだけ?」でした。絵を壊してしまったようにも見えますし、完成前の事故のようにも思えたのです。
でも、しばらく眺めていると、その切れ目の奥に、不思議な静けさと広がりを感じるようになりました。私は普段、移動や姿勢に制限があり、世界を見る視点がどうしても限られがちです。
だからこそ、平面を越えて向こう側へ視線を誘うフォンタナの絵に、強く惹かれたのかもしれません。彼の作品は、見る側の身体感覚にまで働きかけてくるように感じます。
ルーチョ・フォンタナの生い立ちとは?

ルーチョ・フォンタナは1899年、アルゼンチンのロサリオに生まれました。父はイタリア出身の彫刻家で、幼い頃から制作現場が身近にある環境で育ちます。その後、イタリアとアルゼンチンを行き来しながら、芸術教育を受けていきました。
最初は画家というより、彫刻家としての素地が強かったことも、彼の表現を理解するうえで重要なポイントだと思います。第二次世界大戦前後の混乱期、ヨーロッパの美術は大きな転換点を迎えます。
写実や伝統的な絵画だけでは、現代という時代を表せない。そんな空気の中で、フォンタナは絵画と彫刻の境界そのものに疑問を持つようになりました。戦争で破壊された都市や価値観を目の当たりにし、平面の中に閉じこもった表現に限界を感じたのだと思います。
ルーチョ・フォンタナの絵とは?
フォンタナの代表作として知られるのが、キャンバスに切れ目や穴を入れたシリーズです。タイトルには空間的概念という意味を持つ言葉が使われ、絵でありながら、彫刻のようでもある不思議な存在感を放っています。
私が特に印象に残ったのは、切れ目の形や数が作品ごとに微妙に違う点です。ただ切っているのではなく、そこにはリズムや呼吸のようなものが感じられます。色彩も一見すると単純です。
赤や白、黒といった単色の画面が多く、装飾的な要素はほとんどありません。その分、切れ目の存在が強調され、見る人の意識は自然とその奥へ向かいます。私はこの感覚を、窓を開けた瞬間の空気の流れに例えたくなります。キャンバスは壁でありながら、同時に通路でもあるのです。
ルーチョ・フォンタナの絵の特徴とは?
フォンタナの絵の最大の特徴は、絵画という枠を自ら壊している点にあります。普通、絵は平らな面に描かれ、そこに完結した世界を作ります。しかし彼は、あえてキャンバスを切り裂き、裏側の空間を作品の一部として取り込みました。
これは破壊ではなく、拡張だと私は感じています。また、彼の作品には未来への視線があります。宇宙開発や科学技術が注目され始めた時代背景の中で、無限に広がる空間への憧れが、あの切れ目に込められているように思えるのです。
私自身、物理的な制約を日々意識しながら生活していますが、だからこそ、限界の向こう側を想像させてくれる表現に強く共感します。フォンタナの絵は、見る人それぞれの立場や身体条件によって、感じ方が変わる懐の深さを持っています。
最後に
ルーチョ・フォンタナの作品は、最初は戸惑いを与えるかもしれません。でも、少し立ち止まって向き合うと、絵とは何か、空間とは何かを静かに問いかけてくる存在だと気づきます。
私にとって彼の絵は、世界が平面だけでできていないことを思い出させてくれるものでした。キャンバスの向こうに広がる見えない空間は、私たち一人ひとりの想像力そのものなのかもしれません。素人ながら、そんな風に感じています。
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