絵画の世界で「光を操る男」と呼ばれたスウェーデンの画家、アンデシュ・ソーン。その名を聞くと、北欧の透明な空気と、水辺に反射するまばゆい光景が頭に浮かぶ人も多いのではないでしょうか。
彼は印象派と写実主義の間に立ち、独自の光表現を追い求めた画家です。私自身、彼の絵を初めて見たとき、その柔らかい光のタッチと、人間の温もりが共存するような世界に心を奪われました。
今回はそんなソーンの人生と作品を、素人目線で感じた魅力を交えて紹介していきたいと思います。
アンデシュ・ソーンの生い立ちとは?

アンデシュ・ソーン(Anders Zorn)は1860年、スウェーデンのダーラナ地方モーラに生まれました。父はドイツ人の醸造職人、母は農家の女性。両親は結婚せず、ソーンは母の手ひとつで育てられました。
貧しいながらも自然豊かな環境に恵まれ、幼いころから観察することを好み、動物や人々の姿をスケッチするのが日課だったといいます。やがて彼の才能は地元で知られるようになり、ストックホルムの美術学校に進学。
貧困から抜け出すために必死で努力し、19歳で早くも肖像画家として名を上げました。北欧の厳しい気候の中でも、彼の筆は温かく、生命力に満ちていたのです。
アンデシュ・ソーンの絵とは?
ソーンの絵を語るうえで外せないのが「水」と「光」です。彼は油彩だけでなく水彩画でも高い技術を発揮し、まるで水面が動いているかのような表現で観る者を魅了しました。
特に「モーラの夏」「水浴する女性たち」などは、北欧の短い夏の日差しを生き生きと描き出しています。彼の女性像は決して華美ではなく、健康的で、自然体の美しさを持っています。
その一方で、ヨーロッパやアメリカの上流階級の肖像画も多く手がけ、クライアントの個性を的確に捉える筆の確かさでも高く評価されました。アメリカでは大統領ウィリアム・タフトの肖像も描き、その名を世界に広めたのです。
アンデシュ・ソーンの絵の特徴とは?
アンデシュ・ソーンの特徴は、光と影を自在に操る感覚と、筆致の大胆さにあります。彼の筆は細部を描き込みすぎず、むしろ大胆なタッチで空気感を伝えようとします。
それは印象派の影響を受けつつも、独自のリアリズムを保っている点で特異です。人物を描くときも、肌の艶や衣服の質感を光の反射で表現することで、命の鼓動を感じさせます。
また、彼は室内の温かな光、キャンドルやランプの光を描くことも得意でした。その柔らかく包み込むような光は、見る人の心を静かに照らします。まるで彼自身の優しさや人間味が絵筆を通して伝わってくるようです。
最後に
アンデシュ・ソーンは、1920年に故郷モーラで亡くなりました。しかし彼の作品は今も、スウェーデン各地の美術館や世界のコレクションで多くの人に愛されています。自然の光を描きながら、人間のぬくもりを忘れなかった画家。
彼の絵には、北欧の冷たい空気の中に潜む「静かな情熱」が宿っています。私たちが日常で見逃しがちな光の瞬間――それを一枚の絵に閉じ込めたのが、ソーンという画家なのです。彼の作品を前にすると、時間がゆっくりと流れ、心の奥に穏やかな明かりが灯るような感覚に包まれます。
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